全体概要 |
1996年に実際の設計研究会が日刊工業出版社から出版した「続々・実際の設計―失敗に学ぶ―」の内容を元に,
「失敗学」を一般読者向けに読みやすく書き直したものである. 失敗といかにつき合うかによって個人の成長,組織の発展が大きく違ってくる. 起きてしまった失敗に積極的に取り組んでうまく生かせば, その後の創造の大きなヒントにもなるし,また次にくる大きな失敗を未然に防ぐこともできる. 反対に失敗を避けて隠していれば,成功もおぼつかないし,大きな失敗を防ぐこともできない. 失敗の定義・種類から,正しい失敗の伝え方・生かし方・大失敗の防ぎ方まで,「失敗学」をやさしく解説する. |
あらすじ | |
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第一章 | 「失敗学」の第一歩として,失敗とは何かという言葉の定義から始めましょう. さらにこの章では,私こと畑村洋太郎が実際に大学で行っている授業をもとに, 「失敗学」のアウトラインをつかんでいただきたいと思います |
第二章 | 失敗には色々な種類と特徴があります. 失敗をよく知るためには,その種類や特徴をおさえることはとても重要です. ここでは,失敗の種類と特徴について解説します. |
第三章 | ある失敗を次の失敗防止や成功の種に結びつけるには,
失敗が起きるに至った原因や経過などを正しく分析した上で知識化して,
誰もが使える知識として第三者に情報伝達することが重要なポイントになります. 他人の失敗のみならず,自分の失敗体験から何かを学ぶ時にもそのままいえることで, 失敗情報を知識化することは,いわば「失敗学」の大きな柱の一つです. ところが,困ったことに,失敗情報には知識化を阻止する様々な性質があります. 使える知識に変換できなければ,その失敗を次の失敗の防止に役立てることも, 進歩の種として活用することも当然できません. そうしないために,失敗情報の持ついくつかの困った性質と, 失敗情報を役に立つ情報としてきちんと伝達する方法を説明したいと思います. |
第四章 | この章では,失敗情報を実際にどのような形で創造に生かしていくかを見ていきます. プロローグでも触れたように,創造力とは,決められた課題に解を出すことではなく, 何よりもまず課題を自分で設定する力です. そして,その課題を設定する能力がどうすれば身につくかを,この章で理解していただきたいと思います. |
第五章 | 前章では,創造のためにはまず自分で体感する,
そして失敗の経験を通して創造するために力をつけていくということを説明しました. この章では,さらに,失敗を創造の過程に取り入れる考え方を説明します. 失敗から創造へ向かう道は「失敗学」の大きな柱の一つです. 思考平面という図を使って,失敗から創造を生み出すノウハウ部分をもう少し細かく解説するとともに, 思考展開図という図で,自分の創造したものをチェックして, 他の人に伝える方法についても触れたいと思います. |
第六章 | この章では,失敗と真剣に向き合い,そこから学び,さらにそれを生かすことが, 社会にとってどんなメリットがあるのか,さらに視点を広げて, それを具体化するにはどうすればよいのかを知るために 様々な角度から失敗を見ることを提唱したいと思います. |
第七章 | JCOの臨界事故,営団地下鉄日比谷線脱線事故,
JR西日本のトンネル剥落事故,雪印の集団食中毒事件などなど,
最近,企業が引き起こす事故やトラブルが相次いでいます. この章では,致命的ともいえるこうした失敗を引き起こす原因は何か, さらにはこの種の失敗をなくすにはどうすればよいのかを考えてみます. |
第八章 | 失敗を忌み嫌う文化を有する今の日本で失敗を活用していくのはたいへんなことで,
実現のためには新たなシステムとして確立していく必要があります. この章では,失敗活用のシステムづくりについて考えてみます. |