代表あいさつ
2004年度に私的プロジェクトとして「ドアプロジェクト」を実施した後にも,さまざまな事故が起きつづけた.そこで,2007年4月から新たに期間5 年の「危険学プロジェクト」を立ち上げ,通常行われている事故調査などのような狭義の原因究明に限ることなく,事故の防止を最終目標として,社会・組織・人間の考え方や行動様式の解明にまで踏み込んだ調査研究を行ってきた.さらに,これらの研究によって得られた知見をもとに,想定される危険を回避する具体的方法などプロジェクト活動の成果を社会の共有財産とするため,さまざまな媒体を使って広く世の中に情報発信し,知識の共有をはかってきた.
そこに東日本大震災が発生し,福島第一原子力発電所で炉心溶融を伴うレベル7 の大事故が起こった.その約2週間後の2011年3月27日に,計画停電や交通機関の混乱等があってほとんどの催し物が中止されるなか,300人近い人が集まって「危険学プロジェクト 2010年度末報告会」を開催した.東日本大震災とそれに伴って起こった日本原発史上初めての大事故に直面し,我が国の行く末が心配で,何とか方向性を掴みたい人たちで一杯であった.そこで出された要望の中で一番多かったのが,危険学プロジェクトの「活動継続」であった.
この時の要望を重く受け止め,2012年4月から,テーマの内容やプロジェクトメンバーを大幅に改め,期間5年の「危険学プロジェクト バージョンⅡ」を立ち上げ,再出発することにした.バージョンⅡでは,自然と技術,人と組織の問題に正面から向き合い,研究活動を通じた社会との関わりをより深めていきたいと考えている.