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日刊工業新聞社
2019年3月27日
3400円  (税別)


岩波新書
2018年1月19日
760円  (税別)


JR東日本「事故の歴史展示館」見学

 危険学プロジェクトを10年間実施した後,さらにポスト危険学プロジェクトを3年間行うことになりましたが,今年はその最終年にあたります.そこで年度初めに,都合13年間にわたるプロジェクトを締めくくる三現(現地・現物・現人)として,JR東日本の改装後の事故の歴史展示館見学,御巣鷹山の慰霊登山,堤体完成後の八ッ場ダム見学,田老・大槌の津波被災後の復興状況見学を実行するため,4か所を訪問する計画を立てました.
 その第1弾として,2019年4月20日に,JR東日本の事故の歴史展示館(本館,考察館,車両保存館の3つからなる)を見学しました.この研修施設は,2002年にJR東日本の総合研修センター(福島県白河市)内に設置されて以来長年社員研修に使われてきましたが,2018年に本館が改装され,再オープンしました.社員研修用の設備ですが,JR東日本が危険学プロジェクトの会員会社であることから,特別に見学させてもらいました.
 改装された「本館」には,安全の原点,信号冒進・速度超過,異常時対応,列車火災,車両管理・設備管理,保守・建設工事,労働災害,自然災害,ホーム・踏切の9分野に分類された過去の貴重な事故関連情報が展示されています.どの説明も,デジタルサイネージ(電子的な表示機器を使って情報を発信するメディアの総称)が使われていて,見学者が自分の頭の動きに合わせて内容を選択できるようになっていて“合脳的”です.しかも,展示内容が「現地でどのようなことが起こったか」「現場がどうなったか」「関係者には事故がどのように見え,どのようなことを考えたか」の三現思想で作られている上に,「事故が現在どのように生かされているか」の説明もあります.
 「考察館」には,2014年に川崎駅構内で起きた京浜東北線の脱線事故車両が展示されていて,列車脱線事故を考察するようになっています.また,「車両保存館」には,2004年の中越地震で脱線した上越新幹線車両,2005年に突風を受けた羽越本線車両,2011年の東日本大震災で津波被災した常磐線車両が展示され,命を守ることの大切さ,鉄道員の責務の重さを実感するようになっています.
 事故の伝達には,実物展示に勝るものはありません.展示物が観るものに直接語り掛け,観るものの疑問や思いに直接応えてくれるからです.さらに,事故の歴史展示館は,本館の改装以降はどの施設もデジタルサイネージによる,いわゆる「出力型学習(アクティブラーニング)」ができるようになっています.事故に限らず,展示館はこのような“出力型”スタイルが望ましいように思います.
 この見学を終えた後,交通安全のための事故展示ツアーができるとよい,と強く思うようになりました.というのも,日本では責任問題に直結するため,「事故前に関係者が考えたこと,考えなかったこと」「事故後にこういうことを考えておくべきであると思ったこと」を口にできないし,具体的な表現ができないからです.
 これでは「真の伝達」ができません.
 事故遺族や関係者の様々な思いを昇華し,超越した,純粋に事故防止を目的とする展示館が全国各地にできることを強く望みます.