八ツ場ダム 調査見学
2017年6月3日と11月16日の2回にわたり,グループ(10)「災害」分科会を主体とするメンバーが,国土交通省関東地方整備局八ツ場ダム工事事務所の案内で,八ツ場ダムの堤体工事を見学しました.
戦後間もない1947年9月に房総半島南端をかすめて通過したカスリーン台風と停滞していた前線がもたらした大雨によって,群馬県や栃木県で土石流や河川の氾濫が多発しただけでなく,利根川や荒川が決壊して埼玉県東部から東京都の東部にかけた広い範囲で浸水被害が発生しました.この台風による犠牲者は2千人近くにのぼり,利根川の決壊箇所の復旧工事は70日間余りの期間で,延べ16万人が動員されたそうです.
この大災害を踏まえ,国は1949年に全国10水系を対象とする「河川改定改修計画」を策定し,利根川水系では,大規模なダムを8ケ所建設する方針を立てました.そのうちの一つが八ツ場ダムです.様々な事情によって工事が遅れて現在に至っていますが,特に2009年秋に誕生した民主党政権が「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズのもとに堤体工事を中止したことによって有名になりました.
現在は,八ツ場ダム工事を間近で見られる見学ツアーが盛況で,筆者らも道の駅「八ツ場ふるさと館」で評判の「ダムカレー」を食べてきました.筆者らは堤体工事がストップしている2010年に八ツ場ダムを見学に来たことがありますが,その時と比べて隔世の感がします.約70年前のカスリーン台風の悪夢が再来しないように,一日も早い完成を祈るばかりです.
2017年6月3日の1回目の見学では,八ッ場ダム堤体工事のやま場となるコンクリ―ト骨材作りや打設工事を見学しました.特筆すべきことは,石や砂からなるコンクリート骨材をダンプカーでなく,総延長約10kmの粉塵飛散防止カバー付きベルトコンベアによって安全,かつ衛生的に搬送し,しかも,稼働開始以来コンベア故障による搬送停止がないことです.その上,コンクリートの打設が道路工事とほとんど同じ方法で進められている等,ダム堤体工事の進化には,いたく感心しました.
【1回目の見学写真:2017年6月3日撮影】
写真-4 上から見た工事中の八ッ場ダム
写真-5 下から見た工事中の八ッ場ダム
2017年11月16日の2回目の見学では,八ッ場ダムが,6月の見学から4か月が経過し,どのように工事が進んでいるかを見学しました.特に,大型の重量構造物である取水口を,堤体にどのように安全に,しかも短時間のうちに所定の位置に水平移動させ,設置したかについて,動画を交えながら説明を受けました.工期短縮のため,この取水口の最終組み立ては堤体の横で行われましたが,これら一連の工法を可能とする日本の大型土木工事のすばらしさに,改めて感心しました.
【2回目の見学写真:2017年11月16日撮影】
写真-6 ダム右岸天端から見たダム本体工事
写真-7 ダム左岸から見た取水口