本書は,(政府)東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会に委員長として参画した畑村洋太郎,技術顧問として参画した淵上正朗,さらに原子力発電に関する専門知識を有する東京大学・笠原直人の3人が執筆したものである.
上記報告書は非常に膨大で,専門知識を必要とする部分も多いため,その内容をより多くの人に理解してもらいたいという筆者らの意図から,本書は技術面を中心に,時系列でとらえて分かりやすく解説したものである.さらに事故を深く理解する上で必要となる原発に関する勘どころ的な知識も記述されている.また,報告書にはない筆者らの踏み込んだ意見や知識・教訓の伝承を重視するという趣旨から失敗学からの考察も加えられている.
【修正箇所のご案内】
修正1
全電源喪失下のベント作業には、「A/O弁にエアを供給するための電磁弁を駆動するには、バッテリーが必要であった」という趣旨の記述が数か所ありますが、正しくは、バッテリーではなく可搬式の交流発電機が必要でしたので、訂正いたします。
事故時には、仮設照明用の小型発電機を所内から調達して電磁弁を励磁した、とのことです。
なお、SR弁の開操作にはバッテリーが必要であり、バッテリーの確保に手間取ったことが事故を深刻化させた重要な要因であったことに変わりはありません。
修正2
p21、図1-7 で、SR弁から出てきた気体が S/Cプールに吐出される様子がイメージ図で示されていますが、 正確には下図のように、SR弁から吐出されたほぼ水蒸気の気体がベント管内部を通る SR弁吐出管を通り、 S/C底部のクエンチャーで蒸気泡を圧縮され整流されて S/Cプールに吐出されます。
同書、p51、図2-12 で、S/Cのカットアウト部に細く黄色く見えているパイプが SR弁吐出管で、その先に多足虫のように見えるのがクエンチャーです。
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